2017年12月6日水曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

12月5日の授業では、
佐藤麻理子先生(TBSテレビ)にお越しいただきました。本学の卒業生です。


佐藤先生は、事業局文化事業部でプロデューサーをなさっています。
それも展覧会をつくるのがお仕事です。

昨年(2016)秋開催の「クラーナハ展」(国立西洋美術館)や、今夏の「ジャコメッティ展」(国立新美術館)といった大きな展覧会を次々と手掛け、企画立案から展覧会運営、閉会後の報告書作成までをこなしておいでです。


授業では、幾つか展覧会の例を挙げながら、展覧会企画成立のパターンや展覧会が成立するまでの業務内容、タイムスケジュールについてお話をしてくださいました。

複数の展覧会に同時平行で携わり、新しい企画を立てる傍らで、数年前から進行中の企画で海外に出張し、ポスターなどの販促物を制作して広報活動を行い、また開催を直前に控えた展覧会の展示作業に立ち会うかと思えば、閉幕した展覧会の撤収作業にも立ち会うという離れ業です。

美術館とメディアの関係や、現代社会におけるテレビ局の動向についても説明してくださいました。学芸員とはまた少し異なった立場から、展覧会づくりのお話をうかがいました。ひとつの展覧会が企画されて無事に終了するまで、いかに多くの人々が関わり、様々な種類の仕事があるのか、受講生たちも驚きをもって知ったのではないでしょうか。


現在は、来年秋に開催予定の「ルーベンス展」(国立西洋美術館)の準備を進めていらっしゃいます。展覧会を見学する日が楽しみです。

佐藤先生、「展覧会のつくりかた」の貴重なご講義をどうもありがとうございました。

2017年12月5日火曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

11月28日の「芸術の現場から」では、
東京藝術大学大学院保存修復日本画准教授の荒井 経 先生にお話をいただきました。

荒井先生は、日本画の制作を核に、顔料の科学分析と技法再現模写を通した近代日本画の研究、夏目漱石作品に出てくる絵画作品の推定試作、惜しくも失われた文化財の復元制作など、多彩な活動をされています。




大学、大学院で日本画の制作を学び、就職した会社で西洋画の古典技法を学び、それを基にした日本画を制作、発表して画家としての活動を行っていく中で東京藝術大学大学院に入学し、改めて日本の絵画を学ぶことにしたこと、学業の一方でこれまで行ってきた制作・発表活動は変わらずに続けたこと、狩野芳崖(1828~88)の「仁王捉鬼」(東京国立近代美術館所蔵)で博士論文を執筆し、再現模写を行って、当時課題となっていた西洋画のような日本絵画を作り上げるにあたって、芳崖が西洋画の顔料を用いていたことを明らかにしたこと、などご自身の作品画像や日本絵画の修復の様子を映写しながら、お話いただきました。


最後は、2006年からの「べろ藍の風景」シリーズや、戦争や火災で失われた、琉球国王の肖像画である御後絵や、福島県飯舘村の山津見神社のオオカミの天井画の復元事業の様子をお話いただきました。デジタル技術による復元ではなし得ない、土地の歴史や伝統に寄せる、その地域に生きる人々の心性に添おうとする復興の美術を感じることができました。


最新作も、教室に持ってきてくださいました。授業が終わっても、なおお話を伺いたい聴講者の輪ができあがりました。

荒井先生、真摯に日本画の制作に臨んだ、興味の尽きないお話を、本当にありがとうございました。

2017年12月3日日曜日

「西洋美術史実地研修2」(第4回)

いよいよ最終回。また上野に戻ってきました。
晴れ渡る青空、黄色く光る銀杏の葉。冬の穏やかな一日となりました。

午前中は「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」(東京都美術館)を見学。


激しい筆触の向日葵(ひまわり)の絵でおなじみの画家ファン・ゴッホ。彼の作品とは多くの展覧会で出会いますが、今回は日本美術の影響をテーマにした斬新な切り口の展覧会です。日本人によるゴッホ巡礼の紹介にも圧倒されます。


事前学習の発表でも、ゴッホと日本についてポイントを押さえた説明がありました。

立派な屏風の前で集合写真の撮影

午後は「北斎とジャポニスム」展(国立西洋美術館)を見学。


今回の研修では、西洋美術における日本美術との関わりについて、具体的な作品を鑑賞しながら深く学ぶことができたのではないでしょうか。



クリスマス飾りの綺麗な東京文化会館で、事前学習の発表をしてから美術館へ向かいます。課題はもちろん葛飾北斎について、それからジャポニスムについて。

大混雑の展覧会でしたが、自分自身の目で作品をひとつひとつ確かめながら、比較や考察も行えたでしょうか。


ロダンの《考える人》の前で集合写真の撮影。教員の声掛けに調子を合わせてポーズをとってくれた人たちも。それぞれの考える人、いい感じ。

さて、これで平成29年度後期の実地研修は終了です。
気づけば、師走。少し早いですが、どうぞ良いお年をお迎えください。

最後にひと言、履修生の皆さんへ。担当教員の私はいつも提出物の回収を忘れたりして、やたらと抜けていましたが、笑顔で見守り、サポートしてくれてありがとう。研修先での作業もテキパキ、皆さんがしっかりしていてくれて、助かりました。

2017年11月27日月曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

11月21日の授業では、講師として玉虫美香子先生(アーツカウンシル東京)にお越しいただきました。


玉虫先生は、これまでの約30年間、〈東京の夏〉音楽祭(アリオン音楽財団主催)をはじめ、様々な音楽祭やコンサートの企画制作に携わってこられました。
現在は、東京都の芸術文化の発展と振興を担う組織「公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京」のシニア・プログラムオフィサーとして、都内で行われる公演や展覧会、また海外との芸術交流活動等を支援する助成事業や、日本の伝統芸能の魅力を伝えるイベントの企画制作を行っていらっしゃいます。

本授業では、「アーツカウンシル」が第二次世界大戦後間もない1946年に、経済学者ケインズの提唱で設立された英国のアーツカウンシルに端を発することや、芸術政策の理念が政治と連携を取りつつも一定の距離を保つ「アームズ・レングス arm’s length」を原則としていること、日本のアーツカウンシル導入や地域の文化事業も行政の取組みの歴史と深い関わりがあることなどを教えていただきました。


最近のアーツカウンシル東京の事業については、配付資料の冊子『平成29年度 アーツカウンシル東京 事業ラインアップ』とあわせて、具体的な説明をしていただきました。そのなかには、2020年の東京オリンピックに向けた文化プログラムもあります。
また、先生が携わっている助成事業「東京芸術文化創造発信助成」を受けたアーティストたちによるパフォーマンスの映像も見せていただきました。


10月17日の本授業では、セゾン文化財団プログラム・ディレクターの久野敦子先生にお越しいただいており、履修者は、公設と私設、それぞれの立場の文化助成事業について学ぶことができました。

玉虫先生、大変興味深いお話をどうもありがとうございました。

*アーツカウンシル東京 https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/




2017年11月17日金曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

11月14日は、講師として平井良明先生(株式会社サンポウ代表取締役会長)にお越しいただき、「夢と人生」と題し、採石事業からホテル・ブライダルを含めた婚礼観光事業、そして住宅事業への展開に関して、多岐にわたるお話を伺いました。現在は、沼田城の再建にも尽力されています。


石の本場、イタリアで石の文化の歴史的奥深さやスケール感に驚き、その経験が転機になったとのこと。

イタリア、カッラーラの採石場

日本にも石の文化、石がもつ多様性や美しさを伝えたいとの思いから「大理石村」を開設。その核となるヨーロッパの古城「ロックハート城」移築のエピソードなども語られました。

ロックハート城


夢を持ち実行していくために何が必要なのか、また人は何のために生きるのかなど
豊富な例や、哲学者アラン(本名 エミール=オーギュスト・シャルティエ)
の言葉を引用しながら、ご講義をいただきました。

平井先生、素敵なご講義をどうもありがとうございました。

2017年11月11日土曜日

「西洋美術史実地研修2」(第3回)

第3回は、渋谷、そして上野へ。少々忙しい一日でした。

午前中は、Bunkamura ザ・ミュージアムの「オットー・ネーベル展」を見学。日本初の回顧展です。



事前指導の課題は、「オットー・ネーベルについて」と「カンディンスキーとクレー」について。
オットー・ネーベル(1892-1973年)はドイツ出身の画家・俳優で、2度の世界大戦を経験し、移住したスイスで没しています。ヴァイマールの総合造形学校バウハウスでは、そこで教鞭をとっていたカンディンスキーやクレーと出会い、友情が芽生えます。彼らやシャガールの影響も受けつつ、意欲的な制作を展開。
彼の日記を読んだり、友人たちの作品も一緒に眺めたりすることで、ネーベルの作品に対する理解が深まります。他の画家たちの影響はさりながら、実際に近寄って観察してみると、作品一つひとつの緻密な描写に驚かされます。

中庭はすっかりクリスマスの装い。

午後は、国立科学博物館の「古代アンデス文明展」を見学。




事前学習は「アンデス文明について」。
「アンデスって なんです?」というキャッチコピーがしっくりきてしまうくらい、初めはごちゃごちゃしていた知識を整理したところで館内へ。美術館とはまた一味違う展示方法もチェックポイントです。
科博見学に、入る前からなんとなく浮足立っている?
せっかく来たのですから、常設展も見て帰りましょう!

噴水のなかに現出したインスタレーション

噴水前広場では「TOKYO数寄フェス2017」が開催中。

2017年11月10日金曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

11月7日は、講師として澤渡麻里先生(茨城県近代美術館学芸員)にお越しいただき、学芸員の仕事内容や、茨城県主催の「茨城県北芸術祭」についてお話をうかがいました。


美術館学芸員の仕事には、①展覧会企画・運営、②所蔵品(コレクション)管理、③教育普及事業などがあること、また茨城県近代美術館では実際にどのような取組みをしているかなど、具体的に説明してくださいました。

予算についても言及がありました。本授業では、10月10日に目黒区美術館館長と岡崎市美術博物館・おかざき世界子ども美術博物館館長の対談がありましたが、多くの美術館が低予算のなかでいかに運営していくかという問題を抱えている実情をあらためて認識した気がします。


昨2016年秋に開催された「茨城県北芸術祭」では、澤渡先生は、茨城県企画部内の芸術祭実行委員会事務局に勤務なさいました。第1回にして、広さは世界最大級というこの芸術祭。壮大な景色を背景にした作品など、さまざまなアーティストの作品を見せていただきながら、美術館勤務の学芸員とはまた異なる仕事内容を教えていただきました。

澤渡先生は、本来はフランス近現代絵画がご専門とのことですが、日本画の展覧会も手掛けるなど、幅広い領域のお仕事に携わってこられました。

現在、茨城県近代美術館は空調設備改修工事のため休館中で、コレクションの移動展覧会を行っているそうです。澤渡先生は、2018年度、2019年度の展覧会を準備中とのこと。たとえ休館中であっても、学芸員は忙しく活躍なさっているのですね。

澤渡先生、まさに現場ならではの貴重なお話をどうもありがとうございました。