2017年11月27日月曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

11月21日の授業では、講師として玉虫美香子先生(アーツカウンシル東京)にお越しいただきました。


玉虫先生は、これまでの約30年間、〈東京の夏〉音楽祭(アリオン音楽財団主催)をはじめ、様々な音楽祭やコンサートの企画制作に携わってこられました。
現在は、東京都の芸術文化の発展と振興を担う組織「公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京」のシニア・プログラムオフィサーとして、都内で行われる公演や展覧会、また海外との芸術交流活動等を支援する助成事業や、日本の伝統芸能の魅力を伝えるイベントの企画制作を行っていらっしゃいます。

本授業では、「アーツカウンシル」が第二次世界大戦後間もない1946年に、経済学者ケインズの提唱で設立された英国のアーツカウンシルに端を発することや、芸術政策の理念が政治と連携を取りつつも一定の距離を保つ「アームズ・レングス arm’s length」を原則としていること、日本のアーツカウンシル導入や地域の文化事業も行政の取組みの歴史と深い関わりがあることなどを教えていただきました。


最近のアーツカウンシル東京の事業については、配付資料の冊子『平成29年度 アーツカウンシル東京 事業ラインアップ』とあわせて、具体的な説明をしていただきました。そのなかには、2020年の東京オリンピックに向けた文化プログラムもあります。
また、先生が携わっている助成事業「東京芸術文化創造発信助成」を受けたアーティストたちによるパフォーマンスの映像も見せていただきました。


10月17日の本授業では、セゾン文化財団プログラム・ディレクターの久野敦子先生にお越しいただいており、履修者は、公設と私設、それぞれの立場の文化助成事業について学ぶことができました。

玉虫先生、大変興味深いお話をどうもありがとうございました。

*アーツカウンシル東京 https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/




2017年11月17日金曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

11月14日は、講師として平井良明先生(株式会社サンポウ代表取締役会長)にお越しいただき、「夢と人生」と題し、採石事業からホテル・ブライダルを含めた婚礼観光事業、そして住宅事業への展開に関して、多岐にわたるお話を伺いました。現在は、沼田城の再建にも尽力されています。


石の本場、イタリアで石の文化の歴史的奥深さやスケール感に驚き、その経験が転機になったとのこと。

イタリア、カッラーラの採石場

日本にも石の文化、石がもつ多様性や美しさを伝えたいとの思いから「大理石村」を開設。その核となるヨーロッパの古城「ロックハート城」移築のエピソードなども語られました。

ロックハート城


夢を持ち実行していくために何が必要なのか、また人は何のために生きるのかなど
豊富な例や、哲学者アラン(本名 エミール=オーギュスト・シャルティエ)
の言葉を引用しながら、ご講義をいただきました。

平井先生、素敵なご講義をどうもありがとうございました。

2017年11月11日土曜日

「西洋美術史実地研修2」(第3回)

第3回は、渋谷、そして上野へ。少々忙しい一日でした。

午前中は、Bunkamura ザ・ミュージアムの「オットー・ネーベル展」を見学。日本初の回顧展です。



事前指導の課題は、「オットー・ネーベルについて」と「カンディンスキーとクレー」について。
オットー・ネーベル(1892-1973年)はドイツ出身の画家・俳優で、2度の世界大戦を経験し、移住したスイスで没しています。ヴァイマールの総合造形学校バウハウスでは、そこで教鞭をとっていたカンディンスキーやクレーと出会い、友情が芽生えます。彼らやシャガールの影響も受けつつ、意欲的な制作を展開。
彼の日記を読んだり、友人たちの作品も一緒に眺めたりすることで、ネーベルの作品に対する理解が深まります。他の画家たちの影響はさりながら、実際に近寄って観察してみると、作品一つひとつの緻密な描写に驚かされます。

中庭はすっかりクリスマスの装い。

午後は、国立科学博物館の「古代アンデス文明展」を見学。




事前学習は「アンデス文明について」。
「アンデスって なんです?」というキャッチコピーがしっくりきてしまうくらい、初めはごちゃごちゃしていた知識を整理したところで館内へ。美術館とはまた一味違う展示方法もチェックポイントです。
科博見学に、入る前からなんとなく浮足立っている?
せっかく来たのですから、常設展も見て帰りましょう!

噴水のなかに現出したインスタレーション

噴水前広場では「TOKYO数寄フェス2017」が開催中。

2017年11月10日金曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

11月7日は、講師として澤渡麻里先生(茨城県近代美術館学芸員)にお越しいただき、学芸員の仕事内容や、茨城県主催の「茨城県北芸術祭」についてお話をうかがいました。


美術館学芸員の仕事には、①展覧会企画・運営、②所蔵品(コレクション)管理、③教育普及事業などがあること、また茨城県近代美術館では実際にどのような取組みをしているかなど、具体的に説明してくださいました。

予算についても言及がありました。本授業では、10月10日に目黒区美術館館長と岡崎市美術博物館・おかざき世界子ども美術博物館館長の対談がありましたが、多くの美術館が低予算のなかでいかに運営していくかという問題を抱えている実情をあらためて認識した気がします。


昨2016年秋に開催された「茨城県北芸術祭」では、澤渡先生は、茨城県企画部内の芸術祭実行委員会事務局に勤務なさいました。第1回にして、広さは世界最大級というこの芸術祭。壮大な景色を背景にした作品など、さまざまなアーティストの作品を見せていただきながら、美術館勤務の学芸員とはまた異なる仕事内容を教えていただきました。

澤渡先生は、本来はフランス近現代絵画がご専門とのことですが、日本画の展覧会も手掛けるなど、幅広い領域のお仕事に携わってこられました。

現在、茨城県近代美術館は空調設備改修工事のため休館中で、コレクションの移動展覧会を行っているそうです。澤渡先生は、2018年度、2019年度の展覧会を準備中とのこと。たとえ休館中であっても、学芸員は忙しく活躍なさっているのですね。

澤渡先生、まさに現場ならではの貴重なお話をどうもありがとうございました。

2017年11月6日月曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

10月31日の講師として、小野養豚ん先生(アーティスト、国⽴⼤学法⼈筑波⼤学芸術系構成専攻総合造形領域助教)にお越しいただきました。



ご実家が、群⾺県の養豚農家の⼩野養豚ん先⽣。どのような⼯程を経て⾷卓にあがるのか、また豚を制作することをとおして、社会との関係を追究していることなど、
実際に豚や養豚の様⼦を⾒て育った⽅だからこそ語れる、充実したご講義でした。



作品もファンシーなような、それでいてリアル、不思議なパワーを発揮し学⽣も⾒⼊っていました。

2017年11月1日水曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

1024日の講師として、野尻浩二先生(ホルベイン画材株式会社 商品企画室室長)にお越しいただきました。


ホルベイン画材株式会社は、ルネサンス時代のドイツの画家にちなんで命名された、洋画材料専門の老舗です。
油絵具や水彩絵具をはじめ、さまざまな画材を扱っています。
画材の販売以外にもアーティストとのコラボやワークショップ、また若いアーティストの育成なども手掛けています。
野尻さんが室長をなさっている商品企画室の活動は、商品開発というよりも、顧客への間口を広げていくことだそうです。


今日、描画の方法もデジタル化が進むなか、画家を含め、絵具やキャンヴァスといった画材を使って絵を描く人達や画材職人の高齢化と減少、後継者不足、また初等・中等教育における美術授業時間の削減などにより、絵画人口が減少している現状があります。
そこで、商品企画室では、新たな切り口から、幅広い層の人達に美術に親しんでもらおうと多様な企画を立ち上げています。

たとえば、画期的な発想から生まれた、石膏像のアイドルユニット「石膏ボーイズ」。ザリガニワークス、KADOKAWAとの共同企画によるもので、2015年度に結成され、昨2016年にはアニメ化もされました。

本学の「石膏ボーイズ」(?)も授業に参加しました。

昨年秋、本学では展覧会「石膏像を見に行こう!」を開催しました。その際に、現代における古典彫刻の受容として「石膏ボーイズ」を紹介し、ホルベイン画材株式会社にご協力いただきました。

野尻先生、幅広い内容のご講義をどうもありがとうございました。

「西洋美術史実地研修2」第2回

第2回(10月21日)は、東京の美術館に行きました。

今回も雨。さらに列車の遅延も重なって大変な朝の集合。
東京ステーションギャラリーが駅の改札口を出て直ぐにあって本当によかった!
丸の内北口のドームもゆっくり眺められました。



ここでは「シャガール 三次元の世界」展を見学。

事前学習は、もちろん「シャガールについて」。
それから「辰野金吾と東京駅建設、ステーションギャラリーについて」。

東京駅に来たからには、駅の建築や設計者のことも学びましょう。
丸の内南口のドームも見ていきましょう。



シャガール(1887-1985)といえば、幻想的な色彩の絵画が有名ですが、この展覧会は白い立体が主役。赤い煉瓦の壁を背景に、いくつもの大理石のかたまりや柱が月夜に照らし出されているようでした。
彩り豊かで自由な造形の陶器、立体に連動する平面の絵画もひとつになって、調和ある展覧会でした。



午後は三菱一号館美術館。薔薇咲く中庭のわきで雨宿りしながら再集合。
「パリ・グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展」を見学しました。
数日前に始まったばかりの展覧会です。


向かいの建物内で事前学習の発表。まずは「ロートレックについて」。
それから「ジョサイア・コンドルと三菱一号館、美術館について」
旧三菱一号館は、辰野金吾が師事したお雇い外国人ジョサイア・コンドルによる設計です。
歴史資料室では、コンドルの設計図も見ることができます。


展覧会会場には、写真撮影可の部屋もありました。流れる音楽も心地よく、ロートレック(1864-1901)の作品と並んで記念撮影をしている来場者の姿も見られました。

この展覧会のテーマは版画ですが、浮世絵など日本美術と比較しながら鑑賞するのも面白いですね。この研修では「葛飾北斎とジャポニスム展」(国立西洋美術館)も見学する予定です。

雨の東京駅