2017年12月5日火曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)

11月28日の「芸術の現場から」では、
東京藝術大学大学院保存修復日本画准教授の荒井 経 先生にお話をいただきました。

荒井先生は、日本画の制作を核に、顔料の科学分析と技法再現模写を通した近代日本画の研究、夏目漱石作品に出てくる絵画作品の推定試作、惜しくも失われた文化財の復元制作など、多彩な活動をされています。




大学、大学院で日本画の制作を学び、就職した会社で西洋画の古典技法を学び、それを基にした日本画を制作、発表して画家としての活動を行っていく中で東京藝術大学大学院に入学し、改めて日本の絵画を学ぶことにしたこと、学業の一方でこれまで行ってきた制作・発表活動は変わらずに続けたこと、狩野芳崖(1828~88)の「仁王捉鬼」(東京国立近代美術館所蔵)で博士論文を執筆し、再現模写を行って、当時課題となっていた西洋画のような日本絵画を作り上げるにあたって、芳崖が西洋画の顔料を用いていたことを明らかにしたこと、などご自身の作品画像や日本絵画の修復の様子を映写しながら、お話いただきました。


最後は、2006年からの「べろ藍の風景」シリーズや、戦争や火災で失われた、琉球国王の肖像画である御後絵や、福島県飯舘村の山津見神社のオオカミの天井画の復元事業の様子をお話いただきました。デジタル技術による復元ではなし得ない、土地の歴史や伝統に寄せる、その地域に生きる人々の心性に添おうとする復興の美術を感じることができました。


最新作も、教室に持ってきてくださいました。授業が終わっても、なおお話を伺いたい聴講者の輪ができあがりました。

荒井先生、真摯に日本画の制作に臨んだ、興味の尽きないお話を、本当にありがとうございました。

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